2020.3.10 うたコン出演

NHK うたコン 第153回「愛と青春のメロディー 第一夜」に出演させていただきました。

SiriuSが歌わせていただいたのは、布施明さんの名曲〈君は薔薇より美しい〉(1979)。しかもご本人との歌唱。

初めてのテレビ歌唱、しかも生放送ということで出演が決まってからずーーっと、取るものもとりあえず緊張の毎日を過ごしていました。布施明さんといえば、小さいころからテレビで見ていた大スターで一体どのようなコラボレーションになるのか、今の自分にパフォーマンスとして同じ舞台に立つことができるのか…考えれば考えるほど心配事ばかりでした。

心配ばかりに気をもんでいてはどうしようもないと、とにかく練習をしたわけですが….

布施さんの過去の歌唱を聞いていると、自然とこれまで自分が学んできた声楽の技術の核心部分に意識が向くようになりました。私はバリトンとして布施さんの持ち声より少し低く、また声楽的なアプローチは違うと思いますが、これまで「歌ってなんだ」「声ってなんだ」「自分の声とは?」と自問自答しながら過ごしてきた一つ一つの経験を思い返し、練習を繰り返しました。

私としては、大学院時代、師から何度となく言われたrotondo(伊:丸い)でmorbido(伊:柔らかい)な音を求める方向性に再帰できたように思っています。

圧倒的な歌唱力を武器にこれまで長い間芸能生活を送ってこられた布施さん、これまでは遠い存在でしたが、練習の中でまぎれもなく憧れの歌手の一人になっていました。

迎えた本番当日、アレンジャーの勝山紀子先生の歌唱指導(むしろダンス指導)を受け、音楽の確認をした後、初めての布施さんとの対面に緊張しつつリハーサル。

布施さんからは

「一人一人が最高のパフォーマンスをする、それが高い次元で一つになるのが最高のステージだ。だから、自分が一番だと思ってうたうんだ!」

というお言葉をいただき、さらに自分が見つめてきた音楽表現の根本的なところにハッとさせられました。

私が音楽が大好きなのは、音楽には自分で考え、自分で探し、自分で見つけたことを表現した時の喜び。更にそれを人と共有したときの喜びがあるからでした。

私はアンサンブルが好きです。アンサンブルには「合わせる」という要素が不可欠です。しかし、最高のアンサンブルには、個々が自分の殻を一枚一枚破りながら表現を探そうとしているということが大前提となっている、そのことをなんとなく忘れていたような気がします。

布施さんのお言葉を胸に、本番を迎え、ステージ前には布施さん、大田くんと目を合わせ「思い切ってな」という布施さんの言葉を胸に舞台に立ちました。

本番のステージはアッというまでしたが、歌唱後布施さんが親指を立ててジェスチャーして下さったのを、興奮半分、ほっとした気持ち半分で本当に嬉しく受けとめました。

歌の力で生きてこられた布施明さんから、大きなものを学び、自分自身が音楽家であるべきことを強く認識したステージになりました。

また大きくなって布施さんと共演させていただける日を夢見ながら過ごしていきたいと思います。

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